自分の年収が周りと比べて高いのか低いのか、これは誰しもが気になることだ。
このときの「周り」というのは同じ年代の同じ職業の人のことだ。
あなたが化学系研究職の30代前半の人だとしたら、化学系で研究職をしており、他の企業で働いている同年代と比べて自分がどれくらいもらっているのかを知りたいと思うだろう。
しかしネットで調べても欲しい結果は出てこない。
出てくるのは、化学系全体の平均年収とか、せいぜい化学系研究職の平均年収とかだろう。
これらの調査には同年代という縛りがないために、自分と同じ年代の人がどれくらいもらっているのか分からない。
そこで、僕が、入社して5~10年の30代前半研究職(技術職)の平均年収について調査したので、その結果を報告したい。
また、この調査では30代前半の年収のみを調査し、30代後半を除いている。
なぜなら、多くの企業で30代後半からは研究職から管理職へ移る時期であるからだ。
この結果を知ることで、あなたの今後の研究職人生、または会社人生を考えるきっかけになるはずだ。
ぜひ読んでいってほしい。
もくじ
調査方法

ネットでググっても知りたい情報は出てこない。民間の調査や国の調査も見てみたが、ピンポイントでほしい情報というものはなかった。
そこでopenworkという転職の口コミサイトを使って調査を行うこととした。
Openworkには自分が所属している(いた)企業の情報を書く仕様になっている。
そこにはもちろん給料も記載されている。
また書いた人が入社何年目なのか、新卒か中途入社かの記載がある。
さらには、書いた人が研究開発職なのか、営業なのかなどの職種の記載もある。

そこで、openworkを用いて、新卒5~10年間勤務しており、職種が研究開発職または技術職に限定して年収データを集めた。企業は、化学企業売上上位50社だ(参考:strainer等)。
サンプル数は各企業3人(新卒入社5~10年間勤務:30~34歳とする)をピックアップして、3人の年収の平均値をその企業の年収とした。
データの取り方は、年数と職種の条件を満たす人で口コミが書かれた日が浅い人から順に3人分取ることとした。
最初は研究開発職で検索をし、年収データが3人に満たなければ技術職で検索をかけデータを追加した。
それでもデータが不足していればその企業の調査は終了した(1人もしくは2人の年収で平均値を作成した。データがなければデータなし)。
注意点

このデータを取り扱う注意点は、データは口コミが元になっているということだ。
口コミは自己申告なので、源泉徴収などを用いて調査している国の調査などと比べると信頼性は低い。
平均値(n=3)を取ることである程度信頼できる値になっていると思われるが、それでも参考にできる程度だ。
また、年収には残業代も含まれているので、ホワイトで残業が少ない企業は、残業が多い企業に比べて年収が低くなっている可能性もある。
残業が多いのか少ないのかはこの調査法ではわからないので、その点については考慮されておらずあくまで年収のみでの比較である。
また、調査は2024年9月に実施した。
30代化学系研究職年収と企業売上額の関係

それでは、化学企業の売上ランキング上位50社における30~34歳の平均年収を表に示す。
この表の下に売上ランキング上位1~10位の平均年収、上位1~30位の平均年収、上位1~50位の平均年収も併せて示す。
売り上げ順位 | 会社名 | 30-34歳平均年収(万円) |
1位 | 三菱ケミカルG | 743 |
2位 | 富士フイルムHD | 780 |
3位 | 旭化成 | 851 |
4位 | 住友化学 | 670 |
5位 | 信越化学工業 | 617 |
6位 | 三井化学 | 747 |
7位 | 花王 | 800 |
8位 | 日本ペイントHD | 600 |
9位 | レゾナック・HD | 842 |
10位 | 積水化学工業 | 690 |
11位 | 日本酸素HD | - |
12位 | DIC | 533 |
13位 | エア・ウォーター | 530 |
14位 | 東ソー | 650 |
15位 | 資生堂 | - |
16位 | ユニ・チャーム | 560 |
17位 | 日東電工 | 733 |
18位 | 三菱瓦斯化学 | 750 |
19位 | クラレ | 623 |
20位 | カネカ | 733 |
21位 | 関西ペイント | 597 |
22位 | ダイセル | 580 |
23位 | UBE | 607 |
24位 | JSR | 640 |
25位 | ライオン | 608 |
26位 | ADEKA | 582 |
27位 | 日本触媒 | 667 |
28位 | デンカ | 550 |
29位 | 日本ゼオン | 643 |
30位 | ニフコ | 637 |
31位 | トクヤマ | 490 |
32位 | artience | 607 |
33位 | コーセー | 565 |
34位 | 住友ベークライト | 600 |
35位 | アイカ工業 | - |
36位 | サカタインクス | 553 |
37位 | 日産化学 | 654 |
38位 | 日油 | 623 |
39位 | エフピコ | - |
40位 | 日本化薬 | 560 |
41位 | 高砂香料工業 | 550 |
42位 | クレハ | 617 |
43位 | 小林製薬 | 617 |
44位 | ポーラ・オルビスHD | - |
45位 | 東京応化工業 | 815 |
46位 | クミアイ化学工業 | 567 |
47位 | セントラル硝子 | 517 |
48位 | 三洋化成工業 | 587 |
49位 | 東亞合成 | 600 |
50位 | ダイキョーニシカワ | 400 |
1~10位平均 | 734 | |
1~30位平均 | 663 | |
1~50位平均 | 638 |
平均年収は売上ランキング上位1~10位が734万円、上位1~30位が663万円、上位1~50位が638万円だ。
このことから、会社としての売上が高い会社の方が年収も高い傾向があるということが分かる。
ここで調査した50社は化学業界の中での売り上げが大きい会社であり、他の化学企業はそれよりも売り上げが小さいので、表に入っていない企業の年収は、傾向としては表で示した年収よりも低くなると考えられる。
つまり年収が638万円を超えていれば、30代前半化学企業研究職の平均年収を超えているということができる。
売り上げ規模別年収の上がり方
売上額が大きい企業ほど年収が高くなる傾向にあることが分かった。
上の表に示した年収は30-34歳を対象にして行っているが、同様の調査を25-29歳に対しても実施した。
その結果は以下の記事にまとめている。
この調査によると、平均年収は売上ランキング上位10社が569万円、売上ランキング上位30社の平均が546万円、売上ランキング上位50社の平均が527万円だ。
これらの結果を下の表にまとめた。
25~29歳平均年収(万円) | 30~34歳平均年収(万円) | |
1~10位平均 | 569 | 734 |
1~30位平均 | 546 | 663 |
1~50位平均 | 527 | 638 |
この表を見ると、売上が大きな企業においては20代の時点ですでに年収が高い傾向がある。
ただ、売上が大きい企業と小さい企業の年収の差は30代前半(30-34歳)になるとさらに広がっていることが分かる。
例えば、20代のときの売上1~10位の平均年収と1~50位の平均年収を比較すると、その差は約40万円だが、30代のときの売上1~10位平均と売上1~50位の平均を比較すると、その差は約100万円になっている。
つまり、年齢を重ねるにつれてどの企業に働くか、具体的に言えば売り上げが大きな企業で働いているかが、年収に大きな影響を与えているのだ。
30代化学系研究職年収ランキング

では、具体的にどの企業が30代前半の研究職に高い給料を出しているのだろうか。
売上順に並んでいる上記の表を年収順に並べ替え、年収ランキングを作成した。
30代前半の化学系研究職年収ランキングが以下である。
年収ランキング | 会社名 | 30-34歳平均年収(万円) |
1位 | 旭化成 | 851 |
2位 | レゾナック・HD | 842 |
3位 | 東京応化工業 | 815 |
4位 | 花王 | 800 |
5位 | 富士フイルムHD | 780 |
6位 | 三菱瓦斯化学 | 750 |
7位 | 三井化学 | 747 |
8位 | 三菱ケミカルG | 743 |
9位 | 日東電工 | 733 |
10位 | カネカ | 733 |
11位 | 積水化学工業 | 690 |
12位 | 住友化学 | 670 |
13位 | 日本触媒 | 667 |
14位 | 日産化学 | 654 |
15位 | 東ソー | 650 |
16位 | 日本ゼオン | 643 |
17位 | JSR | 640 |
18位 | ニフコ | 637 |
19位 | クラレ | 623 |
20位 | 日油 | 623 |
21位 | 信越化学工業 | 617 |
22位 | クレハ | 617 |
23位 | 小林製薬 | 617 |
24位 | ライオン | 608 |
25位 | UBE | 607 |
26位 | artience | 607 |
27位 | 日本ペイントHD | 600 |
28位 | 住友ベークライト | 600 |
29位 | 東亞合成 | 600 |
30位 | 関西ペイント | 597 |
31位 | 三洋化成工業 | 587 |
32位 | ADEKA | 582 |
33位 | ダイセル | 580 |
34位 | クミアイ化学工業 | 567 |
35位 | コーセー | 565 |
36位 | ユニ・チャーム | 560 |
37位 | 日本化薬 | 560 |
38位 | サカタインクス | 553 |
39位 | デンカ | 550 |
40位 | 高砂香料工業 | 550 |
41位 | DIC | 533 |
42位 | エア・ウォーター | 530 |
43位 | セントラル硝子 | 517 |
44位 | トクヤマ | 490 |
45位 | ダイキョーニシカワ | 400 |
46位 | 日本酸素HD | - |
47位 | 資生堂 | - |
48位 | アイカ工業 | - |
49位 | エフピコ | - |
50位 | ポーラ・オルビスHD | - |
1位は旭化成である。
化学系の中では高い年収で有名だが、今回の調査でもその強さが現れた結果になった。
40代や50代だけでなくすでに30代の時点で旭化成は高い年収を出してくれるようだ。
2位はレゾナックであった。
こちらも年収が高いことで有名だ。
3位は東京応化工業だ。
売上順位を考えるとかなり上位に食い込んだ印象がある。
調査の方法が口コミで3人の年収を平均するという方法なので、結果が上振れしている可能性もあるが、年収が比較的高いというのは間違いないだろう。
以下、花王、富士フィルム、三菱瓦斯化学と続いていく。
46位以降が空欄になっているのは、年収のデータを取ることができなかったからである。
ランキング1位と45位の差は400万円以上であり、その差が大きく開いている。
どの企業に勤めているのかというのは、年収を決めるとても大事な要素であることをもう一度指摘しておきたい。
高い給料をもらうには高給企業へ転職するべき

では、高い年収をもらうためにはどうすれば良いかというと、転職である。
どこの企業に勤めているのかということが年収に直結するので、年収が高い企業に行けば高い年収をもらうことができる。
年収というのは能力よりも立ち位置で決まるものなのだ。
化学系で研究職をしているという立場は同じなのに、企業が違うと年収が大きく違う。
上のランキングを見て、「俺より年収をもらっている人はけっこういるんだな・・」と残念な気持ちになった人も多いのではないか。
その気持ちをそのまま放っておいてはいけない。
なぜなら、数年後には差がもっと開き、さらに残念な気持ちが強くなるからだ。
年収というのは当たり前だが1年間でもらえる給料のことだ。
だから、年収が400万円違えば5年で2000万円、10年で4000万円違うということになる。
しかも、20代のときの年収と30代前半の年収を比較すればわかるように、大きな企業というのは年収の上がり方も他の企業に比べて大きい。
つまりどの企業で働いているかによって、年収および生涯にもらえるお金というのはどんどん差が開いていく。
今転職しておけば数年後には、「転職しておいてよかった」と思うことになるだろう。
高給企業への転職術

高い年収をもらうためには、高い年収を提示する企業に入らなくてはいけない。
ではどうやったら、高い年収の企業に行くことができるのか。
実はそんなに難しいことではない。
普通に年収が高い企業へ応募すれば、意外に内定をもらうことができる。
その理由は二つある。
- 企業は人材を求めているから
- あなたには知識と経験があるから
一つずつ説明しよう。
企業は人材を求めている

調べてみると分かるが高い年収をもらえる企業の募集は普通にある。
なぜなら、今はどの企業も人がなかなかいないからである。
今は昔に比べて転職が簡単になったので、多くの人がより良い条件を求めて転職をしている。
そうなると、優良企業であっても人が辞めるので、その辞めた人の分の補充をしないといけないという状況になっている。
だから、良い条件の企業の募集というのは普通に存在しているのだ。
あなたには知識と経験がある

あなたの知識や経験はあなたが思っているよりも他社で役に立つ。
だからこそ思い切って転職活動を始めてみると、うまくいくことが多い。
そこには構造的な理由がある。
まず、高い給料を出すことができる会社というのは、売上が高く、就業人数も多いことがほとんどだ。
就業人数が多いと、その会社の内部ではどんどん業務の細分化が進む。
そうなると経験する業務の幅は小さくなる。
これが大企業で働く人の実態だ。
では、売上が小さく、就業人数も少ない会社ではどうなるかというと、担当業務の幅が広がる。
研究職と言っても研究だけをしているだけではなく、製造までのスケールアップ、特許出願、顧客とのやりとりなど幅広く実施していることが多い。
それもかなり若いうちからだ。
この経験は転職先の企業にとって魅力的である。
なぜなら、「こんなに経験しているならうちでも貢献してくれるだろう」と転職先に感じてもらえるからだ。
高給企業への転職をするための方法というのは簡単で、今やっている仕事を一生懸命やることだ。
もしこれまであなたが仕事を一生懸命やってきたのなら、間違いなく大企業であっても高給企業であってもあなたはやっていける。
ぜひ転職を始めてみてほしい。
転職を決めたらすべきこと

転職を決めたらすべきことは、転職エージェントに登録することだ。
転職エージェントというのは、あなたの転職を手助けしてくれる強い味方だ。
まずあなたと転職エージェントとで面談を行い、あなたの希望を伝える。
その希望を聞いて、転職エージェントは転職候補の企業の調査、書類の添削、面接のアドバイス、先方の企業との調整などを行ってくれる。
しかもこのサービスを無料で使うことができるので、使わないのはもったいない。
しかし転職エージェントというのはたくさんあるので、どのエージェントを使ったらよいのかわからないという疑問が出てくる。
そこで、僕自身も転職するときに使ったおすすめの転職エージェントを紹介したい。
以下の記事でおすすめの転職エージェントと転職エージェントの使い方について詳しく解説しているので、ぜひ読んでみてほしい。
まとめ

30代前半化学系研究職の年収ランキングを紹介してきた。
年収が高い企業は売上が大きいところが多く、年収は年齢を重ねると勤めている企業によってどんどん差が開くことも示した。
あなたにはぜひ転職をして、より年収が高い企業へ行ってほしい。
それも30代前半のうちにだ。
なぜなら、30代後半になってくると、次はプレーヤーとしてではなく、管理職としてのゲームがスタートするからだ。
そうなってしまって、30代後半になって管理職として転職するときは、管理職の経験が求められる。これまで培ってきた研究分野での知識や経験の求められる比率が小さくなってしまうのだ。
また、そのころには年収が高い企業に勤めている場合と年収が低い企業に勤めている場合の年収差というのはかなり大きく開いているだろう。
今後、後悔しない社会人生活を送るために、給料面で不満を抱えているのなら転職することをお勧めする。
転職を決めたら一番初めに転職エージェントに登録して、面談をしよう。
あなたの将来が良い方向に必ず変わってくるはずだ。